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特集(PC用)

思い出を高画質で記録する「写真印刷」を支える電気電子工学の先端テクノロジー

スマートフォンで撮影したデータを無線で転送し、高画質で紙に印刷する「家庭用フォトプリンタ」。スイッチやセンサーなどの電子部品を製造するアルプス電気株式会社の女性エンジニア・伊藤理紗さんは、そのプリント技術の中心を担う回路基板の設計・開発を担当しています。写真印刷を支える最先端のテクノロジーの裏側を覗いてきました!

 

アルプス電気株式会社 技術本部 M8 技術部
伊藤 理紗さん

熱を繊細にコントロールし、
美しい色のグラデーションを表現

 アルプス電気のフォトプリンタ部品の特徴は、「昇華型熱転写方式」と呼ばれる独自の印刷技術。紙にインクを吹き付けるインクジェット方式の印刷とは違い、インクを含んだリボンを紙に押し当て、その上から熱をかけて印画紙に色を定着させます。伊藤さんが設計する回路基板は、温度のコントロールや印刷用の紙送りを繊細に行うためには欠かせないもの。印刷した写真のクオリティを大きく左右する部品です。
「1インチにおよそ300個も並ぶサーマルヘッド(発熱体)のひとつひとつの温度をICで制御して、綿密に色をコントロールしています。インクフィルムにかける熱の温度の差で色の濃淡を表現するので、インクジェット方式よりも色のグラデーションがきれいに出るのです」

何度もトライ&エラーを重ね、
プリント品質の向上に挑戦

 こうした熱制御システムのほか、紙を送るモーターの制御や画像データの処理、スマホとの無線通信などさまざまな役割を担うICの回路基板をイチから設計するのが伊藤さんの仕事。設計にあたっては、まず「もっと印刷の画質を上げたい」、「データの転送スピードをもっと速くしたい」といったユーザーの要望をヒアリングし、営業部や技術部と打ち合わせをします。機能が決まったら、それに必要なICや無線のモジュールなどの部品を選定し、CADで設計図を作成。その設計図をもとに試作基板をつくるのですが、最初の段階では「電源を入れても作動しない」といった不具合が起こることもあるのだとか。
「設計図はあくまでも“理想値”。理論上はうまくいくはずでも、基板の材質の違いや使用する部品の仕様によって、不具合が発生することもしばしば起こります。不具合の原因を分析して、ひとつひとつエラーをなくしていく。何度もトライ&エラーを重ねてようやく試作品が完成するのです」
 また、プリンタにデータを送る無線通信の電波には、他の電波と混線しないための厳密なルールがあります。そのため、ノイズを軽減させるように調整したり、無線局の規格認証を取得したりといったことも伊藤さんの役割です。
「昨今のフォトプリンタは、スマートフォンやデジタルカメラから画像を無線で送信し、印刷するケースが主流になりつつあります。印刷を制御する回路も、さまざまな環境下で正しく作動しなくてはいけません。そのため、電波暗室での強電波環境下での検証だけではなく、時には山の中の試験所などに出かけて屋外での動作テストをすることもあるんですよ」

 

アルプス電気株式会社

100万個以上の部品を
安定したクオリティで大量生産

 試作品の製作に成功したら、今度はその部品を大量生産するための「量産設計」に取り組みます。試作設計の段階ではユーザーの要望をクリアする ために努力しますが、量産設計は大量の数の部品を安定したクオリティで生産できるよう、実際の製造ラインに合わせて、設計完成度を高めていく作業。こうした量産化の技術は、部品メーカーとして長年にわたって大量生産のノウハウを蓄積してきたアルプス電気が最も自信を持っている分野です。 「例えば、最先端のテクノロジーの研究であれば、100回のうち10回でも成功すればOKです。しかし、アルプス電気の部品は大量に生産するため、100万個のうち10万個も不具合が起きてしまったら、商品になりません。初期設計(理論設計)の性能に近づけながら、10万個、100万個といった数の部品を安定して生産できるよう試行錯誤を重ねています」

目標達成の道筋を
自分で考える力を身につけてほしい

 子どもの頃から理科と図工の授業が大好きだったという伊藤さん。高校生のときに「ものづくりを仕事にしたい」と考え、千葉大学工学部の電気電子工学科に進学しました。部品技術の基礎や無線通信の仕組みを学び、卒業研究では、ある条件下の問題に対していかに効率よく正解にたどり着くかという「最適化理論」を研究。AI(人工知能)のディープラーニングの基礎になる学習理論であり、この研究に取り組んだことは現在の仕事にも役立っているといいます。
「“学習方法”という正解のない領域に挑戦したことで、『自分の頭で考える』という研究の基礎力が身につきました。高校までの授業とは違い、目標達成のためにゼロから実験の道筋を立てることにも面白さを感じていました」
 大学時代に学んだ知識と技術を生かし、アルプス電気に入社後は、1年目からプリント技術の開発・設計部門に配属された伊藤さん。私たちの暮らしの思い出を記録する写真印刷の技術の発展をめざし、日々の仕事に取り組んでいます。
「高校生・大学生のうちに好きなことを見つけて、それを仕事にするためにはどんな勉強をすればいいか、どんな力が必要か、を自分で考えてみてほしいです。迷ったり悩んだりしたら、先生や友達に相談してみればいい。そうすれば、社会にでたときに楽しい職業人生が送れると思いますよ!」

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