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特集(PC用)

災害時の避難区域の曖昧性をなくし 本当に安心できる誘導サインを

道路や橋一つで生活が一変 インフラの重要性を実感

  私が土木の世界に進むことを決めたきっかけは、高校時代の通学路での出来事です。道幅が狭く交通に不便な橋があったのですが、拡張工事が行われたことで安全に渡れるようになり、通学がとても快適になったのです。そのとき、たった一つの変化で生活が快適になるってすごい!と興味を持ちました。もともと建築の仕事に憧れていたこともあり、しだいに道路や橋など、人々の生活を支える街の基盤をつくる仕事ができればいいな、と具体的な進路を思い描くように。そして、土木系の学部に進学しました。  2年次以降は実習や実験が多く、体を動かすことが大好きな私にとって充実した毎日を送っています。現在は以前から興味のあった都市計画の研究室に所属し、卒業研究に取り組んでいます。

自然災害の発生時における 最適な避難場所を提案したい

測量器で測った数値から、さまざまな測定値を算出する際に欠かせない関数電卓。

 卒業研究のテーマは「水害による避難経路確保のための誘導サインの設置」です。テーマを選ぶにあたり、大きなきっかけとなったのは2017年7月に発生した九州北部豪雨。我が家に直接的な被害はなかったものの、祖母の家の近くは道路が寸断されたり鉄道の線路が損壊したりするなど被害も大きく、見慣れた風景が一変してしまいました。いつ起こるかわからない自然災害。私が携わる研究分野で何か力になれたらと思い、この研究テーマに決めました。  防災計画は市町村ごとに立てられていますが、実は立地によっては隣の市町村の避難場所の方が近い場合もあります。自然災害の発生時は、いかに早く避難できるかが生死を分けます。そこで、隣りあう複数の市町村のハザードマップから、本当に適した避難経路・場所を考察し、避難場所の空洞化を無くすために研究を進めています。  将来の目標は現場監督です。2020年までは建設業はまだまだ最盛期で、スケールの大きな仕事に携われる機会は大いにあるはず。人々の生活を心から思う技術者になりたいです。

Message

ひと口に理工系と言っても、学科や専攻は本当に多彩です。よって、自分が将来したいことから逆算して、大学で必要な学びは何かを見極めることが大切だと思います。入念な下調べも、受験の重要なプロセスです。

理工ガールが活躍する研究室
工学部 総合システム工学科 土木工学系 河野研究室

人の動きから未来の交通を予測し 住みよいまちづくりに寄与する

河野 雅也
工学部 総合システム工学科
土木工学系 教授・工学博士

1984年九州大学大学院工学研究科土木工学専攻博士後期課程単位修得退学。1992年西日本工業大学工学部土木工学科教授などを経て、2016年より現職。研究テーマは、都市交通計画をベースに、都市デザインやまちづくりなどの分野も担う。福岡県行橋市・京都郡苅田町の都市計画審議会会長も兼務。

 空港や高速道路など、交通インフラが新たにつくられるときは、私たちが専門とする都市交通計画が必要不可欠です。都市交通計画とは、社会的変化に合わせた新たな時代の交通計画を立てること。そこで、北部九州圏を対象にした約20万人からなるパーソントリップ調査(PT調査)のデータを用いて、将来の交通計画の予測を立てています。PT調査とは、10〜15年毎に実施され、日頃の生活の中で、誰が、どこに、何の目的で、どのような交通手段で移動したかを調査するというもの。この調査データは、今後の効率的な道路施策や公共交通施策をはじめ、未来の住みよいまちづくりにも役立てられます。  また、日本はこれまで費用対効果を優先し、最短ルートで道路計画を進めていましたが、今は“冗長性”を意識した道路計画が求められています。冗長性とは、機能の安定化が図られていることを指します。日本は自然災害が多く、いつ交通がストップするか分かりません。そのために、非常時における迂回路の設定などが必要となります。さらには、連休など平日と比べて著しく混雑する道路がある場合、周辺住民に迷惑がかかることも。したがって、最近では非日常性の交通計画の重要性が叫ばれています。  日本の人口縮減期における、交通計画のあり方も問題視されています。まちづくりを具体的に進める際、まずは対象となる街が抱える問題を見つけることから始まります。過疎化や高齢化など、街の特性に合わせた交通網を引く。例えるなら、街は筋肉で交通が血管です。この両輪があってこそのまちづくりだと思っています。  私の研究室では、学生全員が研究テーマを自分自身で決めています。それは、最後まで研究に責任を持ってもらうためです。授業とは先人がつくったものを後追い体験すること。そして、誰もやっていないものを見つけ出すことが研究です。私は、学生には知識というよりも“目次”を持って欲しい、とよく伝えています。情報のリンクを貼っていれば、先の知識はそこから探しに行けばいい。まずは、研究で能動的に動き、広い見地を身につけてもらいたいと思っています。  都市交通計画のほか、都市デザインやまちづくりといった業界は、女性の豊かな感性が生きる場所です。まちづくりとは、住む人を慮るきめ細やかな心遣いがあってこそ。ともに未来の日本、世界のまちづくりを考えていきましょう。


河野先生がノルウェーのベルゲン市を訪れた際に撮影した一枚。都市の中心地に高速道路のICがある、ユニークなまちづくりが目を引きます。


学生の自主性を尊重し、研究テーマを自身で決める河野研究室。「自分の頭で考えることで、世界は確実に広がります」と期待を込める河野先生。

職業意識を高める現場見学

舗装工事の現場で、最新の「情報化施工」の説明を受ける学生たち

職業意識の醸成を図る機会として、本学では地元自治体との連携事業の一環で地域企業の見学やインターンシップ、業界研究セミナー等を実施しています。実施内容は各学科や系の就職先に関連しており、土木工学系および建築学科は、建設業への就職者が多いことから、建設工事の現場見学を行っています。道路工事現場の見学では、路面表層の透水施工や植生、舗装工事で取り入れている最新の施工方法「情報化施工」を学びました。ビルの工事現場の見学では、耐震設備や施工会社が開発した特殊工法の説明を受けたり、普段目にすることができない構造部を見学したりしました。作業中の現場に入る貴重な体験は、より一層、施工管理の仕事に学生たちの興味を引き、学習意欲の向上につながっています。

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