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「色弱者に本当の色を伝えたい」学生時代の想いが研究者としての原点

――現在のお仕事内容を教えてください。

望月 誰にでも使いやすいWebのデザイン手法や、物事をわかりやすく説明する補足説明の自動生成技術など、ユーザーの目に見える部分と見えない部分の両方に研究成果を還元しています。現在はユーザの快適さを重視した“人間中心設計”をテーマとする部署に所属しており、通信サービスを行うグループ会社からの要望に応える業務と、将来的にサービスとして実用化させるための要素技術の基礎研究業務の両方に取り組んでいます。  基礎研究の成果は、自社の独自技術として年間数件は特許出願を行うほか、新たなコミュニケーション補助ツールについて学会で発表することもあります。例えば、現在の研究テーマは、海外で初めて見る食べ物について「日本の○○のようなもの」と関連するキーワードを抽出し、「たとえ話」のように説明したり、自分の感動の度合いについて、相手が過去に経験した感動の場面から同じ度合いのものを引き合いに出して、その大きさを説明したりするツールです。これは「ライフログ」といわれる分野で、色の研究と双璧をなす私の専門分野です。

――研究者としての原点を教えてください。

望月 高校時代にプログラミングと出合い、数学が好きだったこともあり大学は情報工学科に進学。自分でも油絵を描くほど美術が好きで、入学後には色彩工学への興味が高まる中で、色弱によって生活に不便を感じる方や、色鮮やかに咲く花の色を認識できない方から直接お話を聞く機会がありました。すると、見え方に程度の差やバラつきがあるにもかかわらず、色弱者向けの補正は一律で行われ、補正してもなお健常者と同じ色には見えていない状況を知りました。こうして私は、人それぞれの色の見え方を知り、個人に合わせた色知覚のサポートを実現したいと考えるとともに、個々の見え方に対応する「色弱補正法の研究」をスタート。研究をしている瞬間瞬間が常に面白くやりがいにも溢れ、将来はプロの研究者になりたいという一心で大学院進学を決意しました。
 大学院では、約50人の色弱者それぞれの見え方を数値化して分析した上で、個々の見え方に応じて補正を行う新しい技術を実現。この成果で、「第23回先端技術大賞」学生部門の最優秀賞となる文部科学大臣賞を受賞できました。

――仕事の進め方を教えてください。

望月 私の研究所では仲間と知恵を出し合い、思いついたことはどんどん付箋紙に書いて貼り出します。働き方という面では、私は結婚後に産前産後休暇と育児休暇を取得しました。現在は子供を実家に預けて勤務中。パソコンがあればどこでも仕事ができる時代ですので、“本拠地”である研究所以外で仕事をすることも珍しくありません。女性の研究者が仕事を続けていける環境は整ってきていると実感しています。今後の目標は、国内外の多くの方と対話をしながら、より世界に目を向け、世界をリードする研究開発を進めることですね。
 これから理工学系に進む方には、ぜひ自分の“軸”をもってほしいと思います。得意分野でなくても「好き」で充分。「好き」は物事を続けるための、何よりのモチベーションになるはずです。そして、オリジナリティ。最初はロールモデルを見つけて見習う中で、必ず自分なりの思いが芽生えますので、それを大切にしながら、少しずつ自分の色を出していってほしいですね。

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