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特集(PC用)

どんな場所でもはっきり音が聞こえるマイクロホンをつくりたい

吹奏楽部の活動を通して音への興味が生まれた

A.Sさん

 小中学校は吹奏楽部、高校は器楽管弦楽部に入っていたため、自然と音に興味を持つようになりました。高3 のオープンキャンパスで、電気電子工学系学科の研究室では音に関する研究が行われていることを知り、私にぴったりだと思ったのです。
 大学に入学してからも、吹奏楽部に所属し、ティンパニーを担当していました。大会などでは定番の曲を演奏しますが、老人ホームを訪問した際は演歌、学園祭ではアイドルの曲なども演奏し、喜ばれていました。他学部・学科の友だちがたくさんできて、刺激を受けられるところがクラブの魅力です。

「見える化」を図る 技術の開発に携わりたい

布製の自作ブックカバー。読書が趣味で、年間30冊以上読んでいます。

 現在は、希望通り、電気音響工学の研究室でマイクロホンの研究をしています。携帯電話やカラオケなどで一般的に使われているのは、空気の振動を電気信号に変換する「気導マイクロホン」ですが、周囲の音も同時に拾ってしまうことが弱点です。皆さんも人込みや地下鉄の構内などで、電話の相手から「うるさくて、何も聞こえないよ」と言われた経験があるでしょう。そこで私は、話している人の骨の振動を電気信号に変換する「骨導マイクロホン」を活用しようと考えました。けれども、このマイクロホンは、騒音の影響は受けにくいものの、音がはっきりしないという課題があります。両方を組み合わせて、それぞれの長所を引き出し合って、どんな場所でもはっきり聞こえるマイクロホンを完成させることが目標です。研究を通して、音のように目に見えないものを測定することが楽しくなりました。
 卒業後は、スピードメーターなどを作っている自動車部品メーカーに就職する予定です。スピードも音と同じように目に見えないものですから、それを「見える化」する技術の開発に携わりたいと思っています。

わたしのキャンパス自慢

ライブラリーセンターの最上階に「女性専用閲覧室」が設けられています。
レポートを作成するときは個人学習用の机を使い、テスト前勉強の際にはディスカッション用テーブルで仲間と教え合っています。

理工ガールが活躍する研究室  工学部 電気電子工学科 青木茂明研究室

使う人がどう感じるのかを大切に「音」を使ったシステムを開発

青木 茂明
工学部
電気電子工学科 教授

名古屋工業大学工学部電気工学科卒業。名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程(博士課程)修了。工学博士。NTT コミュニケーション科学基礎研究所主任研究員を経て、2007 年、金沢工業大学教授に就任。専門は電気音響学。日本音響学会技術開発賞、同佐藤論文賞などを受賞。

 日常生活の中には、さまざまな音があふれています。風、雷などの自然の音や、自動車の騒音などもそうですし、私たち人間は言葉でコミュニケーションを図っていますから、それもまた大切な音です。音に関しては、機械工学、建築学、土木工学などの工学から心理学まで、多彩な学問分野からアプローチが進められていますが、電気に関する音響、つまり電気音響学の研究を行っているのが本研究室です。
 電気音響というと、まず思い浮かぶのがマイクロホンやスピーカーなどでしょう。その技術の高度化にも取り組んでいますが、音は単に聞こえさえすればいいというものではありません。人が使用する製品ですから、心地よく、はっきり聞こえることが大切になります。そこが難しく、同時に面白いところでもあります。使う人がどう感じるのかを踏まえて研究を進める必要があり、女性らしい感覚が生かしやすい分野でもあると考えています。
 S さんが取り組んでいる「耐騒音形小型通話ユニット」のほかに、研究室で進めている主なテーマを具体的に紹介しましょう。
 大震災が起こると、停電などで視覚情報が限定される危険性が高まります。そこで、音によって避難誘導できるシステムの開発を目指しています。人間の聴覚の特性を踏まえたシステムを提案することが目標です。
 超音波を使ったパラメトリックスピーカーの研究も進めています。一般的なスピーカーは裏側からも聞こえますが、このスピーカーは真正面にいないと聞こえないという特色があります。自分だけのプライベートな音響ゾーンが作れますし、秘密の話を他の人には聞こえないようにする仕組みの実現も期待できます。
 研究室の学生は、卒業後、電力、鉄道、通信など、多様な分野に進出しています。私は企業の研究所に長らく勤めていたこともあって、単に知識・技術を教え込むのではなく、柔軟な研究マインドを身につけさせるように心がけています。企業では1 つのテーマに固執していてはいけません。社会のニーズに応じて変える勇気が求められます。うまくいかなければ、その都度、臨機応変に工夫を凝らすことも重要です。研究室の活動を通じて、そうした柔軟性を養っていることが、幅広い分野で活躍できるバックボーンになっていると考えています。


人間の代わりに音を聞き、録音した音を分析できるダミーヘッドなどの実験装置を 持った青木茂明研究室の学生たち。


騒音を擬似的に発生させるスピーカーを用いた実験に取り組んでいるS さん。

自主的なものづくりの拠点「新夢考房」が始動

今年4 月から運用を開始した「新夢考房」。工学系の学生がわくわくするようなプロジェクトが豊富。

 学生を「自ら考え行動する技術者」へと成長させるために、自主的なものづくりの拠点として設けられているのが「夢考房」です。
 2017 年4 月、「新夢考房」がスタートし、これまで以上に充実したものづくり環境を実現しています。木材加工、金属加工、3D プリンタ加工などのブースがあり、工作機械や装置がそろっています。必要な部品を作る中で、それらの工作機械の正しい使用方法と操作手順も習得できます。現在、ソーラーカー、エコラン、人力飛行機、ロボット、ロボカップ、義手研究開発、建築デザイン、メカニカルサポート、フォーミュラカー、小型無人飛行機、組込みソフトウェア、人工衛星開発、RoboCup@Home の13 プロジェクトがあります。放課後は常に意欲的な学生が集い、活気にあふれています。

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