ホーム > 特集 > 水中衝撃波で食品を非加熱で加工!?高機能食品の加工装置を開発中

特集(PC用)

水中衝撃波で食品を非加熱で加工!?高機能食品の加工装置を開発中

研究に欠かせない要素は時代と人に寄り添う心

K.Kさん

 私が理工系進学を意識したきっかけは、スマートフォンに入っているIC チップです。携帯電話の機種変更の際、小さなチップに膨大な情報が入っていることに感銘を受け、回路や機械の仕組みが気になり始めました。
 当初、数学が苦手で文系に進むことを考えていましたが、以前から自分のなかにあった“ 手に職をつける” ことへの強い憧れが背中を押す結果に。
 そして、学部4 年生となった現在は、江口先生のもとで高電圧を使った食品加工装置の開発に取り組んでいます。なかでも研究のキーワードとなるのが「人の心に寄り添う科学」。日本の大きな問題、超高齢社会に必要となる高機能食品の提供をめざしています。仕組みとしては、高電圧の放電により水中衝撃波を発生させることで、食品を非加熱で加工できるというもの。熱が発生しないため、栄養素が損なわれないというメリットがあります。こういった学内の研究に加え、現在は日本産業技術教育学会が主催する「発明・工夫作品コンテスト」に向けた研究も進行中。車椅子が下り坂を走行する際に自動ブレーキがかかる走行アシスト機能の研究に取り組んでいます。どのプロジェクトも、課題は山積みですが、徐々に手応えを感じています。

社会問題を解決する一助となれる開発者に

感電を防ぐ絶縁手袋。
大変危険な高電圧を取り扱う私たちに不可欠なものです。

 大学卒業後は、現在の研究をさらに深めるために大学院へ進学する予定です。将来は福祉分野などで自分が携わった製品を通し、社会的な問題が解決できるような開発職に就きたいと思っています。
 さらに、工学者として将来の選択肢を広げるために、海外で働く可能性を視野に入れて英語の勉強も行っています。国際会議に出席することが多く、海外とのつながりも深い江口先生からの影響です。
世界へ羽ばたくチャンスをつかみ、工学者としてひと回りもふた回りも成長したいです。

ひとこと

理系の分野に興味があるなら、得意不得意は二の次。私自身、憧れがモチベーションの原動力でした。
学びたい意欲があれば大学には手を差し伸べてくれる人がたくさんいます。安心して理系進学に挑戦してください。

理工ガールが活躍する研究室  工学部 電子情報工学科 江口啓研究室

非加熱食品加工のための高電圧発生回路の研究・開発

江口 啓
工学部
電子情報工学科 教授

熊本大学大学院自然科学研究科博士課程修了。熊本電波工業高等専門学校情報工学科助教授を経て、2012 年より現職。水中衝撃波を発生させる高電圧発生回路の開発、さらに再生可能エネルギーを利用する情報通信機器用の電源回路の開発にも取り組む。

 私たちは加熱をせず食品を加工するための高電圧発生回路の開発を行っています。「高電圧」と「食品」という、一見結びつかないもの同士ですが、実はこれが日本の超高齢社会にとって有益な発明の種なのです。水中で高電圧が発生すると大電流が流れますが、電極の周りにある水が瞬間的に蒸発すると真空状態になり、電極の周りに圧力変化が生じることで、水中衝撃波が食品に当たります。すると、速い波は外側に抜けますが、遅い波は内部で反射し、内部破壊が発生。たとえば、りんごを実験対象とすると形状は変わらず、りんごの中身だけがやわらかくなります。しかも非加熱なのでビタミンなどが破壊されず、栄養価も変わりません。将来的には、果物のなかにアルコールを注入して同じ加工を施すと、果実のままカクテルとして飲めたり、または硬くて食べにくい牛肉をタレと一緒にパッキングして加工すると、ワンランク上の高級なお肉のようになったり、機能性食品の開発の可能性はますます広がるでしょう。現在、実用化に向けて取り組んでいる最中ですが、安全で栄養価の高い加工食品を安価に提供できる研究として、期待ができる分野です。
 学生の皆さんには挑戦する気持ちを忘れないでいてほしいと思います。当研究室では、毎年参加している「発明・工夫作品コンテスト」で、昨年、一昨年と最上位賞である学会長賞を受賞しました。研究内容のアイデアのよさももちろんですが、相手に理解してもらうための説明力、プレゼンテーション能力も着実に身についている結果だと思います。さらに、国内だけではなく、海外留学や研修などにチャレンジし、海外の同世代の研究者と意見交換するなど、外の世界からも多くの刺激を受けてもらいたいです。何度失敗したっていい。失敗の後の成功体験こそが、その後の人生の糧となるはずです。
 当研究室は、Kさんが語るように「人の心に寄り添う科学」をテーマに研究しています。20 世紀は数多くの製品開発が行われ、モノを豊かにする時代でした。一方、21 世紀は人々の心地よさ、精神的な豊かさを追求する時代です。そのためにも、男性とは違った視点や考え方を持っている女性研究者に期待する部分がとても大きいと思っています。人に寄り添い、生活に役立つ研究には、いつの時代も女性ならではの“ 気づき” が必要不可欠なのです。


先生と学生の距離が近く、和気あいあいとした江口研究室。江口教授の指導のもと、水中衝撃波発生装置は学生メンバーだけで一から組み立てを行いました。


実際に水中衝撃波の加工実験を行ったりんご。形状は変わらず、内部の軟化だけが起こります。加工は果物、野菜、肉などさまざまな食材で可能です。

工学部資格取得者表彰・学業表彰制度

2016 年11 月に行われた表彰式の様子。後列右から4 番目が藤崎さん。

 福岡工業大学工学部では学生への独自の表彰制度と資格取得者表彰を行っています。努力して成績が伸びた意欲的な学生を表彰し、副賞として商品券等を支給したり、さまざまな資格を取得した学生にQUO カードを支給したりしています。
 この独自制度で表彰された藤崎さん(電子情報工学科4 年)は、制度の利点を次のように話します。「前期または後期の成績をもとに、各学科各学年の入学者定員の上位5%の人、およびその前の半期の成績比較で成績順位上位2 名が独自表彰の対象になります。表彰状と副賞のQUO カード(2 万円)をいただきました。成績を表彰されることで自分の頑張りが認められるため、自信にもつながり次も頑張ろうと思えますし、半期で2 万円いただくことでその分のアルバイトを減らし、勉強に集中することができました」

«前の記事:電気という生活インフラの知識を建設業界の仕事で役立てたい!
水中衝撃波で食品を非加熱で加工!?高機能食品の加工装置を開発中
次の記事:「宇宙飛行士をめざすタレント」として、 科学の魅力を発信したい»

このページのトップへ